20年で800万・30年で1500万、端数年で70万跳ねる構造
公開: 2026-05-17 / 最終更新: 2026-05-30
iDeCo を一時金で受け取る時、税金がいくらになるか。これを左右する一番大きな要素が 退職所得控除です。「入口」の所得控除はよく語られますが、出口側でほぼ同額のメリットが 乗ってくることは見落とされがちです。私自身、5 年運用するまで「20 年か 30 年積み立てれば 出口で 1,000 万円以上が非課税枠になる」という具体的な数字を持っていませんでした。
この記事では、退職所得控除の計算式を最小限だけ説明したあと、 具体的な勤続年数ごとの控除額を本サイトのロジックで実測し、 iDeCo 加入期間と退職金勤続年数が重なるときの注意点まで、計算例ベースで整理します。
退職所得控除の計算は、勤続年数 20 年を境にして式が変わります。条文上はもう少し長いのですが、 実務では次の 2 行で足ります。
勘所は 20 年を超えた瞬間に 1 年あたりの「割増し額」が 40 万 → 70 万に跳ねること。 これが「長く積むほど後半が効いてくる」と言われる理由です。
※ 端数年が出た場合は切上げ(math.ceil)。19 年 1 ヶ月でも 20 年として計算されます。 細かい話ですが、加入月数の調整で控除枠が 70 万円跳ねることがあるので、運用指図者期間の 扱いも含めて自分のケースは確認してください。
実際の控除額を年数別に並べると、こうなります。本サイトのシミュレーターと同じ計算ロジック
(logic/exit/deduction.py) で出した数字です。
| 加入年数 | 退職所得控除 | 1 年あたり |
|---|---|---|
| 5 年 | 200 万円 | 40 万円 |
| 10 年 | 400 万円 | 40 万円 |
| 15 年 | 600 万円 | 40 万円 |
| 20 年 | 800 万円 | 40 万円 |
| 25 年 | 1,150 万円 | (+70 万円 × 5) |
| 30 年 | 1,500 万円 | (+70 万円 × 10) |
| 35 年 | 1,850 万円 | (+70 万円 × 15) |
| 40 年 | 2,200 万円 | (+70 万円 × 20) |
20 年で 800 万円、30 年で 1,500 万円。 iDeCo 単独でこの控除枠を作れるのは、長期積立の最大の出口メリットです。 たとえば月 23,000 円を 30 年積み立てて、運用益込みで 1,500 万円に到達したケースなら、 このパターンでは退職所得控除内に収まり退職所得そのものが 0になります (実際の手取りは退職所得控除内で完結する金額かどうかで決まり、超過分は 1/2 課税)。
「あと数ヶ月で 20 年」のときに、加入期間を 1 ヶ月伸ばすか縮めるかで控除枠が変わります。 計算上はこうなります。
| 加入期間 | 切上げ後の年数 | 控除額 |
|---|---|---|
| 19 年 11 ヶ月 | 20 年 | 800 万円 |
| 20 年 0 ヶ月 | 20 年 | 800 万円 |
| 20 年 1 ヶ月 | 21 年 | 870 万円(+70 万円) |
| 30 年 6 ヶ月 | 31 年 | 1,570 万円(+70 万円) |
これがあるので、たとえば「あと 1 ヶ月だけ運用指図者期間を延ばす」「掛金拠出を 1 ヶ月遅らせる」 みたいな話で控除枠が 70 万円跳ねるケースが出てきます。 意図的に狙うものではないけれど、自分の加入期間がどの境目にいるかは把握しておく価値があります。
※ iDeCo の加入期間は「掛金を拠出していた期間」+「運用指図者期間」のうち、税法上 退職所得控除の対象になるのは原則として拠出していた年数です。 運用指図者期間(拠出を停止して運用だけ続けた期間)は控除年数に含まれない扱いで、 自分の年数を伸ばしたつもりが計算上は変わっていなかった、というケースがあります。
ここからが本題というか、計算例を出すほど効いてくる部分です。退職所得控除は 「会社の退職金」と「iDeCo の一時金」のどちらにも適用されるのですが、 受取時期が近いと控除枠が共有されるルールがあります。
この「19 年」がやけに長いのが厄介で、たとえば 60 歳で退職金を受け取って、75 歳で iDeCo を 一時金受給するなら 15 年差なので枠が縮みます。
一方、退職金 → iDeCo のパターンで「19 年ルールの窓外」(年差 20 年以上)を取れるかというと、 現行制度では iDeCo の受取は 75 歳が上限。 60 歳で退職金を受け取った場合、iDeCo を最も遅らせても 75 歳 = 最大 15 年差にとどまります。 退職金 → iDeCo のパターンでは、19 年ルールの窓内に入るのが現実、と覚えておけば 実用上はじゅうぶんです。窓外を取れるのは「iDeCo → 退職金」のパターン (iDeCo 60 歳一時金 + 退職金 66 歳以降など、5 年ルール窓外)に限られます。 この受取上限 75 歳を含め、受取開始年齢を何歳にすると手取りがどう動くかは iDeCoの受取開始年齢は60〜75歳のどれがいい? に実測値でまとめました。
この「順番」と「年差」の計算は、紙の上だと簡単に間違える領域です。 シナリオ別の手取り差は別記事 退職金とiDeCoの受取タイミング で実測値ベースで詳述しているので、控除額の計算式とセットで読むと納得感が出ます。
ここまでの計算は「控除額」だけの話で、実際の手取りは (退職所得 − 控除) × 1/2 × 税率 の構造になります。控除額が大きいほど課税対象が圧縮されるので、控除枠と残高の関係を見るのが肝です。
自分のケースで控除枠を残高がどう超えるかは、本サイトのシミュレーターで具体的に出ます。 手順は次のとおりです。
細かい話ですが、誤解 1 は出口戦略を語るときに本当によく出る勘違いです。控除と非課税は別物。
退職所得控除そのものは「40 万 × 20 年 + 70 万 × 超過年」というシンプルな式です。 複雑なのは式ではなく、退職金との受取順序と年差の組み合わせ。 iDeCo を始めるときから「自分の退職金受取年齢と何年差を取れるか」を意識しておくと、 出口で慌てなくて済みます。
計算式を覚えた上で、実際の手取りは本サイトのシミュレーターで自分のケースを当てはめて 確認するのが一番確実です。年齢・残高・退職金の組み合わせで答えが変わるので、紙の表だけで 判断しない方が良い領域だと感じています。
この記事は MoneyTools Lab(iDeCo 最適受取シミュレーター運営)が執筆・公開しています。 運営者は税理士・ファイナンシャルプランナー・社会保険労務士等の有資格者ではありません。本記事の内容は参考情報としてお読みいただき、具体的な税務判断・資産運用のご相談は専門家へお問い合わせください。
本記事の計算・解説は、以下の一次情報(公的機関の公式ページ)に基づいています。
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