短期間でも節税メリットは十分
公開: 2026-04-20 / 最終更新: 2026-05-28
私は本サイトを運営しながら iDeCo を 5 年運用してきた身なんですが、「50代からのiDeCoは遅い」「運用期間が短いから損」というフレーズはずっと気になっていました。 気になっていたので、当サイトのシミュレーターを実際に回してみたんです。 出てきた数字は、想像していたより手堅い方向。たとえば 55歳・年収700万・月23,000円で65歳まで10年積み立てると、運用益と節税の合計で約125万円のプラス。元本276万円に対して45%の上乗せです。
2026年12月の改正で iDeCo の積立可能年齢が69歳まで延びました。50歳から始めれば最大19年、55歳でも14年。短期戦と呼ぶには長めの期間です。
ただ、年収帯と開始年齢で結果は大きく動きますし、会社の年金制度(企業型DC・DB)の有無で iDeCo の上限が3倍違います。 「自分の場合はどうなるか」を判断する材料を、ひととおり並べていきます。 最後に「老後2,000万円問題のうち iDeCo で何割埋まるか」も実数で出しました。
まず、いちばん気になるであろう「元が取れるのか」から。極端なケースとして、運用利回りを0%に固定して計算しました。元本だけで一切増えない前提です。
55歳・年収700万・月23,000円・10年積立、運用益ゼロ。それでも累計の節税が約80万円。元本276万 + 80万で受取総額は356万円になります。 iDeCo の口座管理手数料は月171円〜程度なので、10年で2万円ちょっと。これを引いてもおよそ78万円のプラスです。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 元本(月23,000円 × 10年) | 2,760,000円 |
| 運用益(年利0%設定) | 0円 |
| 10年累計節税 | 約800,000円 |
| 口座管理手数料(月171円 × 120ヶ月) | 約20,000円 |
| 合計プラス | 約780,000円 |
運用がまったく増えなくても、節税だけで損益分岐点は10年以内に通過します。 50代の主軸を「節税で確実にプラスを取り、運用は副次的」と割り切れる根拠が、この数字です。
※ 年利3%で運用すると、運用益が約45万円乗ります。10年後資産は約321万円、合計プラスは約125万円(次章)。
運用利回りを iDeCo の実績中央値あたりの3%に戻すと、こうなります。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 元本(月23,000円 × 10年) | 2,760,000円 |
| 65歳時点の資産 | 3,213,830円 |
| 運用益 | 453,830円 |
| 10年累計節税 | 799,989円 |
| 合計プラス | 1,253,819円 |
運用益45万・節税80万・合計125万のプラス。元本276万に対して45%の上乗せです。 ここで一番伝えたいのは、節税80万のうちわけが「年収700万の限界税率で月23,000円を10年拠出した結果」だという点。 運用がうまくいくかどうかにかかわらず、毎年確実に積み上がる数字です。
※ 利回り3%は厚生労働省が公表している iDeCo 運用実績の中央値あたり。1%なら運用益は約16万、5%なら約78万に変わります。
節税は年収にきれいに比例しません。所得税の累進ブラケットで段がつくので、同じ月23,000円・10年でも年収帯でこれだけ差が出ます。
| 年収 | 所得税ブラケット | 10年累計節税 | 合計プラス(運用益込み) |
|---|---|---|---|
| 400万円 | 5% | 約42万円 | 約87万円 |
| 500万円 | 10% | 約52万円 | 約97万円 |
| 600万円 | 10% | 約56万円 | 約101万円 |
| 700万円 | 20% | 約80万円 | 約125万円 |
| 800万円 | 20% | 約84万円 | 約129万円 |
| 1,000万円 | 20% | 約84万円 | 約129万円 |
気になるのは年収600万→700万のジャンプ。500万→600万の節税増は約4万円なのに、600万→700万で約24万円の差。 ここで所得税ブラケットが10%から20%に上がるためです。同じ月23,000円でも、ブラケットが1段上がると節税額がほぼ倍。
一方、800万から1,000万までフラットなのは、月23,000円・10年では拠出総額が276万円と少なめで、課税所得を所得税23%ブラケットの下まで押し下げきれないため。 高所得帯で効果を引き出すなら月額を上げるほうが筋。次章で見ます。
※ 年収別の詳細は 年収別 iDeCoの節税額早見表 で整理しています。 30〜40代の数値感は 30代から始めるiDeCo で開始年齢別の比較を組んでいます。
iDeCo の月額上限は、会社員でも一律ではありません。会社の年金制度(企業型DC・DB)の有無で、こんなに違います。
| 会社の年金制度 | iDeCo月額上限 | 10年で拠出 | 10年累計節税 | 合計プラス |
|---|---|---|---|---|
| DC/DB なし | 62,000円 | 744万円 | 約175万円 | 約297万円 |
| DB あり(月10,000円相当) | 52,000円 | 624万円 | 約150万円 | 約253万円 |
| DC あり(月20,000円拠出) | 42,000円 | 504万円 | 約126万円 | 約209万円 |
条件は「55歳・年収700万・10年・利回り3%」で揃え、月額だけ変えています。 DC/DB なしで満額拠出すれば、合計プラスは約297万円。月23,000円の主軸ケース125万円の2.4倍です。
自分の会社にどんな年金制度があるかは、給与明細の天引き欄でだいたい見えます。 「企業型確定拠出年金」「確定給付」と書かれた行の有無を確認するか、総務に「確定給付年金(DB)と企業型DCの加入状況」と尋ねれば1分で分かります。 50代でこの確認をしないまま月23,000円で固定してしまうのは、年に数十万円の機会損失になりかねません。
年収700万・月23,000円・利回り3%を固定して、開始年齢だけを変えてみます。69歳まで積立可能なので、50歳開始なら19年、60歳開始なら9年。
| 開始年齢 | 積立年数 | 元本 | 運用益 | 累計節税 | 合計プラス |
|---|---|---|---|---|---|
| 50歳 | 19年 | 524万円 | 約181万円 | 約152万円 | 約333万円 |
| 52歳 | 17年 | 469万円 | 約142万円 | 約136万円 | 約278万円 |
| 55歳 | 14年 | 386万円 | 約93万円 | 約112万円 | 約205万円 |
| 58歳 | 11年 | 304万円 | 約56万円 | 約88万円 | 約144万円 |
| 60歳 | 9年 | 248万円 | 約36万円 | 約72万円 | 約108万円 |
| 63歳 | 6年 | 166万円 | 約16万円 | 約48万円 | 約64万円 |
50歳と60歳を比べると、合計プラスは333万 vs 108万で約3倍差。 内訳を見ると運用益の差が約5倍(181万 vs 36万)に対して、節税の差は約2倍(152万 vs 72万)。 「期間が長いほど複利が効く」という常套句が、ここで非線形に立ち上がっています。
ただ、60歳開始でも108万円のプラスは出ます。元本248万に対して44%の上乗せ。 「60歳になってからでは無理」と思っているなら、この数字を一度見ておく価値があります。
50代でググるとほぼ確実に出てくるのが「老後 2,000 万円問題」。金融庁の試算で、高齢夫婦無職世帯が月 5.5 万円の赤字、30 年で約 1,980 万円不足、というやつです。 この 2,000 万円のうち iDeCo で何割埋まるのか、当サイトのシミュレーターで実数を出してみました。
前提は「55歳・年収700万・10年積立・利回り3%・退職所得控除フル活用で受取」。月額は主軸ケース(月23,000円)と満額ケース(月62,000円・DC/DB なし)の2パターン。
| 項目 | 主軸:月23,000円 | 満額:月62,000円 |
|---|---|---|
| 拠出期 10 年累計節税 | 約 80 万円 | 約 175 万円 |
| 65 歳時点 iDeCo 資産 | 約 321 万円 | 約 866 万円 |
| 受取時の税負担 | 0 円(控除内) | 約 -46 万円 |
| 手取り資産 | 約 321 万円 | 約 820 万円 |
| iDeCo 経由の合計プラス | 約 401 万円 | 約 995 万円 |
| 2,000 万円のうちカバー率 | 約 20% | 約 50% |
主軸ケースで2,000万円の約 20%、満額ケースで約 50% を iDeCo 単独で埋める計算。 退職所得控除は加入年数 10 年で 400 万円なので、主軸ケースの 321 万円は全額非課税で受け取れます。 満額ケースの 866 万円は控除 400 万円を超える 466 万円が1/2課税の対象ですが、それでも手取りで 820 万円残る。
ここで強調したいのは、iDeCo は単独で 2,000 万円を埋める制度ではないこと。退職金(厚労省統計で大卒男性平均約 2,000 万円、中堅企業で 1,000〜1,200 万円)・公的年金(夫婦合算で月 22 万円が標準モデル)と組み合わせて、2,000 万円不足のうち「税優遇で確実に上乗せできる枠」を担う位置づけです。 「2,000 万円問題は退職金と年金でほぼ埋まる、足りない分を iDeCo の税優遇で取りに行く」と考えると、月23,000円から始めても 20% 分の上乗せは十分な戦果です。
※ 退職金との重なり方によっては「5年ルール」「19年ルール」で控除が削られる場合があります。詳しくは iDeCo退職所得控除の計算例 と 退職金とiDeCoの受取タイミング を参照してください。
50代でiDeCoを始めるのは、若い世代にはない優位性が3つあります。順に書きます。
① 教育費のピークが抜けている
子どもが大学卒業まで進むと、毎月10〜20万円規模の教育費負担から解放されます。 この浮いた分をそのまま iDeCo に回せれば、月額を上限まで上げる現実味が一気に増す。 30代の主軸が「月10,000円から段階的に増額」だとすると、50代後半は「いきなり満額」が成立しやすい年代です。
② 収入のピーク帯にいる
年収が高いほど所得税のブラケットが上がり、同じ拠出額に対する節税額も大きくなります。 前章の通り、年収700万の限界税率は20%で、節税額は500万のときの約1.5倍。 50代の年収ピークはちょうど iDeCo の節税効率が最大化される帯にハマります。
私自身は30代で月23,000円から始めましたが、当時の年収帯では所得税ブラケットが5〜10%で節税効果が小さく、「もう少し年収が上がってから増額しよう」と先延ばしにしていました。 実際に上がってからシミュレーターで比較すると、同じ拠出で節税額が倍近く違うのが分かって、もっと早く満額にしておけばよかったと感じています。 50代でブラケットが20%に乗っている人は、この「増額の最適タイミング」がまさに今です。
③ 退職金との出口設計が見える
会社の退職金がいつ・いくら出るかは、50代になればだいたい見えてきます。 これに合わせて iDeCo の受取年を調整すれば、退職所得控除を取り合わずに済む。 通称「5年ルール」「19年ルール」と呼ばれる制度で、出口で数十万〜数百万単位の差が出ます。 50代から始めるなら受取設計を最初から組み込めるのが大きい。 詳しくは 退職金とiDeCoの受取タイミング で書いています。
50代から始める場合、運用期間が10〜19年と短めなので、商品選びは「無理しない」が基本です。 「全部定期預金」でも「全部株式」でも極端すぎるので、いくつかのパターンで考えます。
運用利回り0%でも節税で十分プラスになるのは前述のとおり。なので、リスクを取ってリターンを狙う必要は本質的にはありません。 一方、年利3%が出れば運用益45万円が乗るので、無視するには大きすぎる。ここがバランスの取りどころです。
配分パターン別に、55歳・月23,000円・10年で65歳資産を出してみました。
| 配分 | 想定利回り | 65歳資産 | 運用益 |
|---|---|---|---|
| 元本確保型 100% | 0% | 約 276 万円 | 0 円 |
| 元本確保 70% + バランス型 30% | 加重 1.2% | 約 293 万円 | 約 17 万円 |
| バランス型 100%(株50:債券50) | 3% | 約 321 万円 | 約 45 万円 |
| 株式100%(外国株式インデックス) | 5% | 約 357 万円 | 約 81 万円 |
「元本確保 70% + バランス型 30%」と「バランス型 100%」で運用益の差は約 28 万円。10 年で見ると意外と小さい。 10年弱で見るとリスク資産の比率を上げるほどリターンが伸びますが、下落のタイミングで受取が来ると元本割れの可能性も上がる。 50代の場合、節税80万円のベースが揺るがないので、運用益の上振れを狙うより「下振れを抑える」設計の方が筋。
実際の主流は、定期預金など元本確保型を6〜7割、残りをバランスファンド(株と債券のミックス)に置くあたり。 投資信託は1本で分散投資になるバランス型を選べば、商品選びで迷う場面は最小化できます。 株式100%は、運用期間が10年以下になると下落から戻る前に受取が来るリスクがあるので、50代後半以降はあまり推奨されません。
※ 商品選びは金融機関ごとに用意されている商品が違います。 手数料の安いネット証券が有利で、信託報酬0.2%以下のインデックス型が候補に上がりやすい構図。
この記事は MoneyTools Lab(iDeCo 最適受取シミュレーター運営)が執筆・公開しています。 運営者は税理士・ファイナンシャルプランナー・社会保険労務士等の有資格者ではありません。本記事の内容は参考情報としてお読みいただき、具体的な税務判断・資産運用のご相談は専門家へお問い合わせください。
本記事の計算・解説は、以下の一次情報(公的機関の公式ページ)に基づいています。
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