月7.5万円上限と小規模企業共済の二段構え
公開: 2026-04-30 / 最終更新: 2026-06-11
私は会社員として iDeCo を 5 年運用しています (運営者の運用体験談 参照)。 シミュレーターを書くために自営業ケースも実装したのですが、上限と節税効果の数字を見たときに 正直、ちょっと羨ましかったです。会社員の月 23,000 円に対して、自営業は月 75,000 円。 年間で約 3 倍の所得控除が取れる構造です。
ただし、自営業の iDeCo はそれ単体で完結するものではなく、退職金・厚生年金がない代わりの 「自分で作る老後資金」という位置づけ。会社員のように雇用者拠出ぶんもないので、 自分の判断で枠を埋めにいく必要がある制度です。
この記事は、自営業ケースをシミュレーターに実装する過程で整理した 「枠の正しい計算・他制度との併用・受取時の優位性」を書きます。
75,000 円は 国民年金基金・付加年金との合算枠です。 すでに国民年金基金に月 20,000 円を掛けているなら、iDeCo の上限は 55,000 円に下がる構造。 何も併用していなければ、フルに 75,000 円まで掛けられます。
国民年金基金 月 15,000 円併用 → iDeCo 上限 = 75,000 − 15,000 = 60,000 円/月
※ 小規模企業共済は別枠(iDeCo の上限には影響しません)。次のセクションで扱います。 私がシミュレーターを実装する時、自営業の入力欄で一番悩んだのが「国民年金基金 vs 小規模企業共済」の 位置づけの違いでした。前者は合算枠を消費し、後者は完全別枠。ここを混同するとシミュレーター結果が 全然違うものになるので、UI でも分けて入力させる設計にしています。
利回り 3%・扶養なし・上限ぎりぎりまで拠出、という条件で 3 ケース試算しました。
| 条件 | 月額 | 積立年数 | 最終残高 | 累計節税 |
|---|---|---|---|---|
| 30 歳・所得 450 万 | 60,000 円 | 35 年 | 約 4,449 万円 | 約 509 万円 |
| 40 歳・所得 650 万 | 50,000 円 | 25 年 | 約 2,230 万円 | 約 456 万円 |
| 50 歳・所得 800 万 | 75,000 円 | 15 年 | 約 1,702 万円 | 約 410 万円 |
私がこの数字を初めて回した時、一番ドラマチックだったのが 50 歳開始ケース。 15 年積立でも累計節税が 410 万円。年あたり約 27 万円の節税は、 会社員(月 23,000 円・年 8 万円程度)の 3 倍以上の効率です。
40 歳・所得 650 万のケースは、限界税率が約 30% に乗る帯。 同じ月 50,000 円でも 30 歳・所得 450 万(限界税率約 20%)より節税が高効率になっています。 「枠を埋めにいくかどうか」が同じ自営業の中でも収入帯で意味が変わる、という構造です。
自営業が併用できる制度は 3 つありますが、iDeCo の枠と独立に効くのは 小規模企業共済の別枠だけ。ここが自営業節税の本丸です。
小規模企業共済は、iDeCo の上限とは 完全に独立した別枠で、 月最大 70,000 円(年 84 万円)まで全額所得控除。 iDeCo(年 90 万)と組み合わせると、所得控除は 年間最大 174 万円に達します。 自営業の節税効果が大きいと言われる最大の理由がこの二段構え。
iDeCo 月 75,000 円 + 小規模企業共済 月 70,000 円
→ 所得控除 年間 174 万円 → 限界税率 30% なら 約 52 万円/年、20% なら 約 35 万円/年の節税
残りの 2 制度は、iDeCo の合算枠を消費する立ち位置。 国民年金基金は終身年金として受け取れる安定性がある一方、運用商品の自由度はありません。 iDeCo に振り分けるか国民年金基金に振り分けるかが、自営業の節税戦略の分岐点。 付加年金は月 400 円を国民年金保険料に上乗せすると、将来の老齢基礎年金に 「200 円 × 納付月数」が終身で加算される制度。月 400 円分しか合算枠を減らさないので影響はわずかで、 コスパは高め。ただし国民年金基金との同時加入はできない点に注意。
自営業には会社員のような退職金がありません。これは老後資金の弱点である一方、受取時の 退職所得控除を iDeCo にすべて充てられるという強みでもあります。 会社員は退職金と iDeCo の控除枠を奪い合いますが、自営業にはその競合がない。
iDeCo 加入 30 年の自営業者が一時金で受け取る場合:
退職所得控除 = 800 万 + 70 万 × (30 − 20) = 1,500 万円
残高 1,500 万円までは受取時の所得税・住民税ゼロ
上のシミュレーション 30 歳開始ケースの最終残高 4,449 万円を一時金 + 年金で受け取る場合、 退職所得控除をフルに使えるのは自営業ならではの利点。 勤続年数ごとの退職所得控除の具体額は 退職所得控除の計算例 に整理しました。
※ 小規模企業共済の一括受取も「退職所得」扱いです。 iDeCo と 同じ年に受け取ると控除枠を共有する点に注意。 時期をずらす(10 年/19 年ルール参考、退職金と iDeCo の受取タイミング 参照)か、 片方を年金形式で受け取る選択肢があります。
私が自営業ケースの入力 UI を設計する時、想定外で引っかかったポイントを思い出した順に書きます。 自営業の方が iDeCo を始める時の落とし穴とほぼ重なります。
30〜40 代向けの全体像は 30 代から始める iDeCo、 年収別節税は 年収別 iDeCo の節税額早見表 を参照。
この記事は MoneyTools Lab(iDeCo 最適受取シミュレーター運営)が執筆・公開しています。 運営者は税理士・ファイナンシャルプランナー・社会保険労務士等の有資格者ではありません。本記事の内容は参考情報としてお読みいただき、具体的な税務判断・資産運用のご相談は専門家へお問い合わせください。
本記事の計算・解説は、以下の一次情報(公的機関の公式ページ)に基づいています。
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