35歳・年収500万・月2万円・30年で約584万円のプラス
公開: 2026-04-20 / 最終更新: 2026-05-30
この記事を書く前、私は「30代=iDeCoのゴールデンエイジ」というよく見るフレーズに、半歩だけ疑問を持っていました。 複利が効きやすいのは確かに事実です。ただ、住宅・教育・転職と、お金が動く場面が多すぎる10年でもあります。 「60歳まで引き出せない口座」に毎月2万円を30年間預けて、それで本当にプラスになるのか。
当サイトのシミュレーターで実際に計算してみると、結論はかなりはっきりしました。 年収500万円の会社員が35歳から月2万円を30年積み立てると、運用益と節税の合計で約584万円のプラス。 元本720万円に対して80%増し、というオーダーです。
ただ、この数字は鵜呑みにしないほうがいい。年収帯と開始年齢で結果はかなり動きます。 「30代から始めるべきか」を判断するために必要な数字を、ひととおり並べていきます。
ちなみに私自身、30代でこの口座を開けてもう5年目です。実際に続けてみて分かったこと、最初に誤解していたことは 会社員5年目のiDeCo体験談にまとめました。数字の裏にある体感も合わせて読むと、判断の解像度が上がると思います。
まずは一番想像しやすい条件から。会社員(企業年金なし)・扶養なし・利回り3%固定。 この前提で当サイトのシミュレーターを通すと、こうなります。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 積立元本(月2万円 × 30年) | 7,200,000円 |
| 65歳時点の資産(年3%運用) | 11,654,738円 |
| 運用益 | 4,454,738円 |
| 30年間の累計節税額 | 1,382,374円 |
| 合計プラス | 5,837,112円 |
運用益445万・節税138万・合計584万のプラス。元本720万円に対して、約80%が「増えた分」です。 運用益の445万円は同じ720万円を普通預金に置いた場合と比べての差なので、 iDeCoでなくても投資信託を持っていれば近い数字は出ます。 ここから iDeCo 固有の上乗せが、節税の138万円。
※ 利回り3%は厚生労働省が公表しているiDeCo運用実績の中央値あたり。 実際は商品選びとマーケットで上下します。1%なら運用益は約140万、5%なら約950万に変わります。
節税は年収(厳密には課税所得)に比例しません。所得税の累進ブラケットで段がつきます。 同じ月2万円・30年間でも、年収帯でこれだけ差が出ます。
| 年収 | 所得税ブラケット | 30年累計節税 | 合計プラス |
|---|---|---|---|
| 300万円 | 5% | 約1,088,000円 | 約5,542,000円 |
| 400万円 | 5% | 約1,088,000円 | 約5,542,000円 |
| 500万円 | 10% | 約1,382,000円 | 約5,837,000円 |
| 600万円 | 10% | 約1,455,000円 | 約5,910,000円 |
| 700万円 | 20% | 約2,183,000円 | 約6,637,000円 |
| 800万円 | 20% | 約2,190,000円 | 約6,645,000円 |
注目してほしいのは年収700万円のジャンプ。500万→600万の節税増は約7万円なのに、600万→700万では約73万円。 ここで所得税のブラケットが10%から20%に上がるためです。 同じ掛金でも、ブラケットが1段上がると節税額がほぼ倍になる構造。 年収が上がる見込みのある30代は、昇給に合わせて節税効果も自動で増える、という見方もできます。
※ 上記は「扶養なし・社会保険料は概算」の素のシミュレーション。扶養家族や住宅ローン控除があると、 ブラケット境界の年収はもう少し上にずれます。年収別 iDeCoの節税額早見表 で詳しく整理しています。
30代向けの記事でよく見るのが「上限まで満額拠出を推奨」という主張。 これは半分正しくて、半分は強すぎると思います。
節税効果の観点では、月10,000円・20,000円・23,000円(会社員上限)の節税額は線形に増えます。 年収500万円のケースだと、月10,000円で30年73万円、月20,000円で30年138万円、月23,000円で30年155万円。 つまり「満額のほうが効率がいい」という事実はなくて、月額に対してフラットに節税されます。
だとすると、満額にするかどうかの判断軸は「節税効率」ではなく「流動性」です。 iDeCoは原則60歳まで引き出せないので、突発的な出費に使えません。 生活防衛資金(手取り6ヶ月分が目安)を別口座に積み終わってから、iDeCoの月額を上げていく順序が安全です。
① 生活防衛資金(手取り6ヶ月分、普通預金または個人向け国債)
② iDeCo を月5,000〜10,000円で開始(小さく始めて、口座開設・商品選びの慣れを優先)
③ 生活が安定したら満額に向けて段階的に増額
④ 余力があればNISAも併用(iDeCoの引き出し制限の隙間を埋める)
なので「いきなり月23,000円」より「月10,000円で1年やってから増やす」のほうが続きやすい。 iDeCoの掛金は年1回まで自由に変更できるので、最初は小さく始めて構いません。
「30代から始めるべき」という主張の根拠を、開始年齢別の数字で見てみます。 年収500万・月2万円・利回り3%を固定して、開始年齢だけを変えた比較です。
| 開始年齢 | 積立年数 | 元本 | 65歳時資産 | 運用益 | 30年間節税 |
|---|---|---|---|---|---|
| 25歳 | 40年 | 9,600,000円 | 18,521,190円 | 8,921,190円 | 1,843,165円 |
| 30歳 | 35年 | 8,400,000円 | 14,831,273円 | 6,431,273円 | 1,612,769円 |
| 35歳 | 30年 | 7,200,000円 | 11,654,738円 | 4,454,738円 | 1,382,374円 |
| 40歳 | 25年 | 6,000,000円 | 8,920,156円 | 2,920,156円 | 1,151,978円 |
| 45歳 | 20年 | 4,800,000円 | 6,566,040円 | 1,766,040円 | 921,582円 |
35歳開始と45歳開始を比べると、運用益は445万 vs 177万で約2.5倍の差。 一方、節税は138万 vs 92万で約1.5倍。「複利の効果は時間に対して非線形」というのが、ここに数字として出ています。
ただ、よく見ると45歳から始めても合計プラスは元本480万に対して約269万円。元本に対して56%は増える計算です。 「30代がベスト」は事実だけど、「40代では遅い」は言いすぎ。 50代からでも遅くない?iDeCoの損益分岐点 でも触れていますが、 iDeCoは始めるタイミングが多少遅くてもプラスは確保できる仕組みです。
30代の本当の優位性は「失敗してもリカバリ期間がある」点だと思います。 最初に選んだ商品が合わなかったら途中で配分変更すればいいし、収入が落ちたら掛金を下げればいい。 やり直しが効く長さがあるのが、30代から始めるいちばんの利点。
30代でiDeCoに二の足を踏む理由は、だいたい3つに収まります。順に現実的な対処を書きます。
① 教育費
子どもの教育費は、ピークが大学進学時。35歳で第一子なら、ピークは50代前半です。 iDeCoは60歳まで引き出せないので、教育費の準備には使えません。これは諦めるしかない。 教育費は別枠で、つみたてNISA・学資保険・普通預金で備える前提で、 iDeCoは「老後資金専用の引き出し禁止口座」と割り切るのが現実的です。
② 住宅
住宅の頭金もiDeCoでは準備できません。これも別枠。 ただ、住宅ローン控除を受けている期間(最大13年)は、 iDeCoの所得控除と住宅ローン控除が「税額」を取り合う形になり、所得税からの還付額が思ったより小さくなることがあります。 この場合でも住民税側で控除されるので、節税効果がゼロになるわけではありません。 気になる方は iDeCoとNISAの違い・併用メリット も参考にしてください。
③ 転職
30代は転職が増える年代。iDeCoは転職しても口座が継続できますが、 移管手続きを6ヶ月以内にしないと、自動移換されて運用が止まり手数料も取られます。 転職時にやることはシンプルで、転職先の総務に「企業型DCがあるか」を確認し、 なければ iDeCo 加入者のまま継続、あれば移管・切り替えの手続き。 放置だけが本当に損をするので、退職時の To Do リストに必ず入れておきます。
これは少し意外に響くかもしれませんが、30代から始める最大の恩恵は受取設計の自由度だと思っています。
iDeCoの受取(出口)には、退職金との重なり方で税額が大きく変わるルールがあります。 通称「5年ルール」「19年ルール」と呼ばれているもので、退職金とiDeCoの受取年を一定期間ずらさないと、 退職所得控除が一部カットされます。
35歳から始めれば、65歳の受取まで30年間あります。途中で会社の退職金がいつ出るかが見えてきたら、 それに合わせて iDeCo の受取年を調整する余地がある。 たとえば「会社の退職金を60歳で受け取り、iDeCo は65歳で受け取る」のように5年空けると、 退職所得控除をフルに使えて手取りが数十万〜数百万単位で変わります。
45歳や50歳で始めると、退職金の受取時期と iDeCo の運用期間がほぼ重なってしまい、調整の余地が小さくなる。 時間があるうちに出口を意識しておくのが、30代から始める一番大きな価値かもしれません。 出口の最適化は 退職金とiDeCoの受取タイミング で詳しく書いています。
この記事は MoneyTools Lab(iDeCo 最適受取シミュレーター運営)が執筆・公開しています。 運営者は税理士・ファイナンシャルプランナー・社会保険労務士等の有資格者ではありません。本記事の内容は参考情報としてお読みいただき、具体的な税務判断・資産運用のご相談は専門家へお問い合わせください。
本記事の計算・解説は、以下の一次情報(公的機関の公式ページ)に基づいています。
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